家庭用の低温調理とは
低温調理はレトルト食品を湯煎で温める要領で、食材をお湯であたためる調理です。
そのための調理器具として有名なのはANOVAです。ANOVAは家庭用に普及している商品です。ANOVAは水にさしておくと、水流をおこして水を撹拌しながら、ヒーターで設定温度まで水を温めます。温度が下がると自動的にヒーターで水を再度温めます。
ANOVAを使うと湯煎のお湯を、自動で長時間一定温度に保つことができます。
なぜ低温調理と呼ぶかというと、ANOVAは主に、肉をできるかぎり低い温度で加熱する目的で使う人が多いんです。
肉の低温調理はやめておいたほうがいいです
料理への探究心として、ANOVAで実験をしたいというのであれば問題ないです。ヤッピーもいろいろ実験していてとても楽しいです。
以前はアメリカから個人輸入するしかなかったのですが、現在は日本のアマゾンでも売っている業者があるようですし、日本のメーカーからも同様の低温調理器具が販売されているようです。
おそらくこの低温調理器具は、研究室で細菌を一定温度で培養するための実験器具の機能を、転用したものではないでしょうか。

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興味深い調理器具ではありますが、初心者や初級者がANOVAで調理したおいしい料理を、誰かに提供したいというのであれば、お勧めしません。
お勧めできない理由を説明していきます。
肉の低温調理の原理と動機
低温調理を目指す人は、次の考えの方にもとづいてチャレンジすることが多いようです。
- 肉はジューシーでやわらかい方がおいしい。
- 肉は加熱すると水分が抜けていき、ジューシーさが失われるし固くなる。
- できるだけ低い温度で加熱を終わらせればジューシーさとやわらかさが保たれる。
- 低い温度で加熱をやめると細菌が死なないため食中毒になる。
- 60℃程度の低い温度でも、長時間温めれば細菌は死ぬので食中毒にならない。
- ANOVAで60℃などの温度で長時間温めれば、安全でジューシーでやわらかな、おいしい肉が食べられる。
家庭での低温調理は命がけ
ANOVAの温度計が完璧であると信頼できますか。
もし故障して、大切な家族に食中毒による不幸があっても、後悔しませんか。
どんなに疲れていても、どんなに慣れてきても、正確に肉の中心の温度を測ることをおこたらないと言い切れますか。魔が差すということが、今までの人生になかったでしょうか。
水を入れる容器が小さくて、水がうまく撹拌されずに温度ムラが発生していませんか。
できあがりに不安を感じたときに、その肉を捨てられますか。もったいないと思って食べちゃいませんか。
ぎりぎりの温度を目指したくなりませんか。牛肉ならまだしも、とり肉や豚肉ではかなり危険な行為です。
本当においしいですか
男性に多いのですが生肉願望とでもいうのでしょうか。できるだけ生の状態の肉を食べることが、なんかいいみたいな(本当に好きな方にはゴメンサイ)。
でも多くの女性やこども、食に対して保守的な人は、おいしいと思ってくれません。ジューシーというより、ぶにょぶにょで気持ち悪いとか、赤くて気持ち悪いとか思います。おいしいと言ってくれても、それは気を使っているだけかもしれませんよ。
またANOVAで調理した肉は、どこを食べても同じ食感となります。均一な食感はすぐに食べ飽きます。焼いていないので香ばしさがありません。そのためANOVAで調理した肉の表面を、焼いたりあぶったりします。それでも薄く表面が焼けるだけで、均一な食感は変わりません。
フライパンで焼いた方が早くて簡単で香ばしさも上ですし、一枚の肉の中にカリッとした部分から、かみごたえのある部分、ジューシーでやわらかな部分があって食べ飽きないし、よりおいしいと感じる人が多いのではないでしょうか。
ジューシーさはソースで補えますし、脂の多い肉を選ぶことでも補えます。
かみごたえもおいしさのうちです。
そう考えると、手間暇かけて命もかけて、ANOVAで調理する必要はないと思いませんか。
こんなシチュエーションなら低温調理もおすすめ
ホームパーティーで5cmの厚さの牛ステーキを10人分提供したいと思ったら、ANOVAはとても有効です。
普通に焼いていたら時間がかかって難しいですよね。
そんなときは、提供予定の時刻に合わせてANOVAで肉を温めておきます。
提供時にフライパンで表面を焼くだけなので、それほど時間差なく10人分のステーキを出すことができますし、絶賛されるでしょう。
でもこれってもうプロの仕事じゃないですか。
そう、低温調理はやはり業務用の技で、家庭用に使う技ではないと感じます。
まとめ
- ANOVAは勉強用にはとてもよい。
- 安全性を考えると家庭料理用には使わないほうがよい。
- 肉はフライパンで上手に焼けるようになることを目指す。
- 低温調理はプロ向け。
担当:やっぴー